認知療法とは、心の問題の根本的な原因である「認知の歪み」に着目し、それを修正することで、症状の改善を図る短期的な精神療法です。
認知とは、私たちが物事を受け止め、理解する際の考え方や見方のことです。認知療法では、うつ病などの患者さんが、自分自身、周囲、将来に対して否定的・悲観的に考え込んでしまう思考パターンを持っていることに焦点を当てます。
認知の歪みとは、現実と大きく乖離した、極端で不合理な考え方のことです。例えば、
- 白黒思考: 物事を白か黒か、絶対か0か100かのように極端に分けて考える。
- トンネル思考: 悪いことが起こったら、それがずっと続くと思い込む。
- 思考フィルター: 悪いことばかりに目がいって、良いことは無視してしまう。
- レッテル貼り: 自分を「ダメ人間」などと思い込んでしまう。
- 拡大解釈・縮小解釈: 悪いことは必要以上に大きく捉え、良いことは必要以上に小さく捉えてしまう。
- べき思考: 自分がこうあるべき、こうしなければならないという強い思い込みを持つ。
- 心読み: 相手の考えや気持ちを勝手に決めつけてしまう。
といったものがあります。
認知療法では、まずセラピストと患者さんが協力して、認知の歪みを特定します。そして、その歪みが現実とどのように異なるのか、なぜそのような歪んだ考え方が形成されたのかを理解していきます。
次に、より柔軟で現実的な考え方へと認知を修正していきます。具体的には、以下のような方法があります。
- 自動思考記録: 自分が普段どのような考えをしているのかを記録し、その考え方が妥当かどうかを検討する。
- 認知再構成: 認知の歪みに基づいた考え方を、より客観的で現実的な考え方へと修正する。
- 行動実験: 認知の歪みに基づいた行動を避け、より建設的な行動をとってみる。
- リラクゼーション法: ストレスを軽減し、心を落ち着かせる。
認知療法は、うつ病、不安障害、摂食障害、人格障害など、さまざまな精神疾患の治療に有効であることが示されています。また、がん、心臓病、慢性疼痛などの身体疾患の治療にも効果があるとされています。
認知療法は、短期間で効果が現れるという特徴があります。また、患者さん自身が能動的に治療に参加するため、再発予防効果も高いと言われています。
認知療法に興味がある方は、精神科医や臨床心理士に相談することをおすすめします。
認知療法を受ける際の注意点
- 認知療法は、すべての精神疾患に有効なわけではありません。
- 認知療法は、短期間で効果が現れるという特徴がありますが、すべての患者さんで効果があるわけではありません。
- 認知療法は、患者さん自身が能動的に治療に参加する必要があります。
認知療法の効果を高めるために
- セラピストとの信頼関係を築くことが重要です。
- セラピストの指示を忠実に守ることが重要です。
- 積極的に質問したり、意見を述べたりすることが重要です。
- セラピストと協力して、治療に取り組むことが重要です。
認知療法は、心の問題を改善するための有効な手段です。認知療法に興味がある方は、ぜひ精神科医や臨床心理士に相談してみてください。