認知的不協和とは、自分の思考や行動に矛盾があるときに生じる不快感やストレスのことを言います。 人は認知的不協和の状態に陥ったとき、この不快感やストレスを軽減させるために認知や行動を変化させます。
認知的不協和の実験
認知的不協和の有名な実験としては、レオン・フェスティンガーが行った「単調な作業の実験」が挙げられます。
この実験では、被験者は単調な作業を1時間行いました。その際、1ドル支払われたグループと20ドル支払われたグループに分けられました。
その後、被験者たちは、同じ単調な作業を他の人に勧めるように求められました。
その結果、1ドル支払われたグループは、20ドル支払われたグループよりも、作業を楽しいと感じたと答える傾向が強かったことが明らかになりました。
これは、1ドルという低い報酬では、単調な作業を楽しいと感じることができないため、認知的不協和を解消するために、作業を楽しいと感じるように認知を修正したためと考えられています。
参考URL:
認知的不協和(理論)とは?【わかりやすく】具体例、解消法 – カオナビ人事用語集
認知的不協和の特徴
認知的不協和の特徴は、以下の3つです。
不快感やストレスを感じる
認知的不協和の状態になると、人は不快感やストレスを感じます。この不快感は、認知の矛盾によって生じる自己同一性や自己評価の混乱によって引き起こされると考えられています。
認知や行動を変化させる
認知的不協和の状態になると、人は認知や行動を変化させようとするのです。認知の矛盾を解消するために、自分の考えや行動を正当化したり、矛盾する認知を無視したりするなどの行動をとります。
不協和の強さは、認知の重要性と不協和の程度によって決まる
認知的不協和の強さは、認知の重要性と不協和の程度によって決まります。認知の重要性が高いほど、不協和の強さも高くなります。また、不協和の程度が大きいほど、不快感やストレスも大きくなります。
参考URL:
認知的不協和とは?身近な例と解消方法、マーケティングにおける考え方を解説 | 株式会社Sprocket
認知的不協和の具体例
以下に、認知的不協和の具体例を挙げます。
ダイエットしたいけど、スイーツが食べたい
ダイエットしたいと思っている人が、スイーツを見ると食べたい気持ちが湧いてくることがあります。この場合、「ダイエットしたい」という認知と「スイーツが食べたい」という認知が矛盾するため、認知的不協和が起こります。この不協和を解消するために、人は「スイーツはたまになら食べても大丈夫」と自分に言い聞かせたり、スイーツを食べる代わりに運動をしたりすることで、両方の認知を一致させようとします。
タバコは体に悪いとわかっているのに、吸ってしまう
タバコは健康に悪いことはわかっているものの、それでも吸ってしまう人は少なくありません。この場合、「タバコは体に悪い」という認知と「タバコを吸いたい」という認知が矛盾するため、認知的不協和が起こります。この不協和を解消するために、人は「タバコはリラックス効果がある」や「タバコを吸わないとストレスが溜まる」など、タバコを吸うことのメリットを強調することで、タバコを吸うことを正当化しようとします。
嫌いな人に好意を持たれる
自分は嫌いな人だと思っていても、その人が自分を好意を持ってくれている場合、人は戸惑いや不快感を覚えることがあります。この場合、「嫌いな人」という認知と「好意を持たれている」という認知が矛盾するため、認知的不協和が起こります。この不協和を解消するために、人は「その人は本当は嫌いじゃない」や「その人の良いところを見つけよう」など、その人の良いところを探すことで、嫌いな人への認識を変化させようとします。
環境保護に賛成なのに、プラスチック製品を使う
この場合、環境保護に賛成という認知と、プラスチック製品を使うという認知が矛盾しています。この矛盾を解消するために、人は「プラスチック製品は便利だから、環境に悪影響を及ぼすとしても仕方がない」と考えたり、「プラスチック製品を減らすために、他の取り組みを頑張ればいい」と考えたりするようになります。
参考URL:
認知的不協和とは?身近な例をもとに【わかりやすく】解消法を解説|管理職研修・育成ならストレッチクラウド | 管理職研修・育成ならストレッチクラウド
認知的不協和の対処法
認知的不協和を解消するために、人は以下の3つの方法をとる傾向があります。
認知の変更
矛盾する認知のうち、1つを変更することで不協和を解消します。例えば、「健康のために禁煙したい」と「タバコを吸いたい」という認知の矛盾を解消するために、「タバコを吸っても健康に害はない」と認知を変更する、という方法があります。
行動の変更
矛盾する認知のうち、1つの行動を変更することで不協和を解消します。例えば、「健康のために禁煙したい」と「タバコを吸っている」という認知の矛盾を解消するために、「タバコを吸うのをやめる」という行動を変更する、という方法があります。
新しい認知の追加
矛盾する認知を補足する新たな認知を追加することで不協和を解消します。例えば、「健康のために禁煙したい」と「タバコを吸っている」という認知の矛盾を解消するために、「タバコを吸う代わりに、運動をする」という新たな認知を追加する、という方法があります。
参考URL:
認知的不協和理論とは【具体例や解消方法などを解説します】|グローバル採用ナビ
認知的不協和の活用法
認知的不協和を活用したビジネスやマーケティングの例としては、以下のようなものが挙げられます。
アフターフォローを徹底する
商品やサービスを購入した顧客に対して、アフターフォローを徹底することで、顧客が購入したことを正当化させる効果があります。例えば、購入後に商品の使い方やメンテナンスの方法を教えたり、購入後のアンケートを実施したりすることで、顧客は「この商品を買ったことは正解だった」と感じるようになります。
認知的不協和を解消する提案をする
顧客が購入を迷っている商品やサービスに対して、認知的不協和を解消するような提案をすることで、購入を促進する効果があります。例えば、購入後に返品や交換ができることを明示したり、購入特典を用意したりすることで、顧客は「この商品を購入しても失敗しない」と安心して購入することができます。
営業の際、顧客にお願いをする
営業の際に、顧客にお願いをすることで、顧客が商品やサービスを購入したいという気持ちが高まる効果があります。例えば、顧客に試供品やデモを試してもらったり、顧客に商品やサービスの紹介をしてもらったりして、顧客が商品やサービスをより身近に感じさせることで、購入意欲を高めることができます。
キャッチコピーに矛盾した表現を入れる
キャッチコピーに矛盾した表現を入れることで、顧客の注意を引き付け、商品やサービスの特徴を印象付ける効果があります。例えば、「やせるのにおいしい」や「高品質なのに安い」などのキャッチコピーは、顧客の認知的不協和を刺激することで、商品やサービスの魅力をより効果的に伝えることができます。
参考URL:
認知的不協和とは?解消法とビジネスにおける活用術を紹介 [2022] • Asana
認知的不協和のメリットとデメリット
メリット
認知的不協和には、以下のメリットがあります。
自己調整の促進
認知的不協和によって、人は自分の考えや行動を振り返り、より適切なものに調整しようとします。そのため、認知的不協和は、自己成長や自己啓発につながる可能性があります。
意思決定の促進
認知的不協和によって、人は意思決定を迫られます。そのため、認知的不協和は、行動を起こすきっかけになる可能性があります。
納得感の向上
認知的不協和によって、人は自分の行動や判断を納得させようとします。そのため、認知的不協和は、納得感や満足感の向上につながる可能性があります。
デメリット
認知的不協和には、以下のデメリットもあります。
歪んだ認知の形成
認知的不協和を解消するために、人は自分の認知を歪めてしまうことがあります。そのため、認知的不協和は、偏った判断や行動につながる可能性があります。
自己欺瞞
認知的不協和を解消するために、人は自分の行動や判断を正当化しようとします。そのため、認知的不協和は、自己欺瞞につながる可能性があります。
ストレスの増加
認知的不協和を解消できない場合、ストレスが増加する可能性があります。
参考URL:
認知的不協和とは?認知的不協和を理解し、行動改善を行おう! | HRコラム
認知的不協和理論の同義語、類義語、関連語、反対語
- 認知的不協和理論