役割距離とは、社会学者のアーヴィング・ゴフマンが提唱した概念で、人が担っている役割とその役割に対して期待される行動との間に生じる距離のことを指します。
例えば、教師という役割であれば、教壇に立って生徒に教えることが期待されます。しかし、教師が授業中に冗談を言ったり、生徒と親しくなったりすることは、教師としての役割期待とは少しずれていると言えます。このように、役割期待から少しずれた行動をとることを、ゴフマンは役割距離と呼びました。
役割距離は、以下の2つの機能があるとされています。
役割の緊張を和らげる
自己の存在を表現する
役割を演じる際には、常に役割期待に沿った行動をとることが求められます。しかし、役割期待は必ずしも本人の希望や価値観と一致するわけではありません。そのため、役割を演じているときの緊張や葛藤を和らげるために、役割距離をとることがあります。
また、役割距離は、自己の存在を表現する手段にもなります。例えば、上司に冗談を言うことや、同僚と茶々を入れることによって、自分のユーモアや親しみやすさを表現することができます。
役割距離は、日常生活の中で頻繁に見られる現象です。例えば、
接客業の人が、客に対して親しみやすい態度をとる
友人同士が、冗談を言ったり、悪ふざけをしたりしながら会話する
芸能人が、演技の中で自分とは異なるキャラクターを演じる
といった行動は、いずれも役割距離の例と言えます。