フロムの非生産的性格とは、人間の本来的な能力や可能性を発揮できていない、歪んだ性格のことです。フロムは、人間の性格は大きく「生産的性格」と「非生産的性格」の2つに分類できると考えました。生産的性格とは、他者と積極的に関わり、自分の能力を社会に役立てようとする性格のことです。一方、非生産的性格とは、他者との関わりを避け、自分の能力を社会に役立てようとする意欲が低い性格のことです。
フロムは、非生産的性格を以下の4つのタイプに分類しています。
- 受容的性格:他者から愛や承認を求め、他者に依存する性格です。
- 搾取的性格:他者から何かを得るために、他者を利用する性格です。
- 貯蓄的性格:物やお金を蓄えることで、安全や安心を得ようとする性格です。
- 市場的性格:自分を商品として、他者から評価や承認を得ようとする性格です。
これらの非生産的性格は、いずれも人間の本来的な能力や可能性を発揮できていないことが特徴です。例えば、受容的性格の人は、他者から何かを得るために、自分の能力や努力を十分に発揮できません。搾取的性格の人は、他者を利用することによって、他者との共生や協力を実現することができません。貯蓄的性格の人は、物やお金を蓄えることに固執することによって、他者との関係を深めることができません。市場的性格の人は、自分を商品として扱うことで、他者との真のつながりを築くことができません。
フロムは、非生産的性格は、現代社会の不安や不満によって生じると考えました。現代社会は、競争が激しく、不安や不満が蔓延しています。そのため、人は他者から愛や承認を求めたり、他者を利用するようになったり、物やお金を蓄えるようになったり、自分を商品として扱うようになったりするのです。
フロムは、非生産的性格を克服するためには、人間の本来的な能力や可能性を発揮できるような社会の実現が必要であると主張しました。そのためには、競争を抑制し、人々の不安や不満を解消するような社会改革が必要であると考えています。