認知のゆがみとは、物事を客観的に捉えることができず、自分の考え方の癖に従って解釈してしまう状態のことを指します。
認知のゆがみの提唱者
認知のゆがみを提唱したのは、アメリカの心理学者であるアーロン・ベック(Aaron Temkin Beck)です。ベックは、うつ病患者の治療に当たる中で、患者たちが現実を歪めて捉えていることに気づきました。そこで、1976年に「認知のゆがみ」という概念を提唱し、うつ病の治療に認知行動療法(CBT)を導入しました。
参考URL:
脱!ネガティブ!「認知のゆがみ」をなおして自分に自信を持つ方法 | 保育のお仕事レポート
認知のゆがみの種類と具体例
ベックは、認知のゆがみを10種類に分類しました。
全か無かの思考
物事を白か黒、成功か失敗、良いか悪いという二項対立で考えることです。例えば、テストで100点を取れなかったことを「失敗した」と捉え、自分はダメな人間だと考えるなどです。
一般化のしすぎ
1つの出来事や経験を、他のすべての出来事や経験にも当てはめて考えることです。例えば、失恋したことを「誰も私のことを愛してくれない」と捉え、人間不信に陥るなどです。
心のフィルター
自分に都合の悪い情報や出来事を排除し、都合の良い情報や出来事だけを捉えることです。例えば、仕事でミスをしたときに、自分のミスばかりに目を向けて、良い点は全く見ようとしない場合などです。
マイナス化思考
物事を否定的にとらえる考え方です。例えば、自分の容姿を「ブス」と捉え、自信を失うなどです。
結論への飛躍
十分な根拠がないのに、事実と異なる結論を下してしまうことです。例えば、友人が仕事でミスをしたことを聞いて、「この人は仕事ができない」と決めつけてしまうなどです。
拡大解釈と過小評価
自分の失敗や欠点を過大に捉え、他人の成功や長所を過小評価する考え方です。例えば、プレゼンで失敗したことを「もう二度とプレゼンなんてできない」と過度に心配し、他人がプレゼンで成功したことを「運が良かっただけ」と過小評価するなどです。
感情的決めつけ
自分の感情を客観的に捉えられず、その感情を事実だと捉えてしまうことです。例えば、誰かと話をしていて、相手が少し冷たい態度を取っただけで、「この人は私を嫌っている」と決めつけてしまうなどです。
べき思考
自分や他人に対して、あるべき姿や理想を押し付ける考え方です。例えば、仕事でミスをしてしまった自分に対して、「もっと完璧に仕事をこなせるはずなのに」と自分を責めてしまうなどです。
べき思考
自分や他人に対して、あるべき姿や理想を押し付ける考え方です。例えば、仕事でミスをしてしまった自分に対して、「もっと完璧に仕事をこなせるはずなのに」と自分を責めてしまうなどです。
他者の心を読む
他人の考えや気持ちを自分の勝手な想像で決めつけてしまうことです。例えば、友人が何を考えているのかわからず、「この人は私のことを嫌っている」と決めつけてしまうなどです。
参考URL:
認知のゆがみについて公認心理士が解説しました。 | 名古屋市瑞穂区新瑞橋の心療内科・精神科 みずほクリニック
認知が歪む原因
認知が歪む原因は、大きく分けて以下の3つが挙げられます。
生育環境や経験
幼少期の体験や、これまでの人生で経験したことが、認知のゆがみに影響を与えることがあります。例えば、ネガティブな体験を多く経験した人は、自分自身や周囲の人々をネガティブに捉えてしまう傾向にあります。また、親や周囲の大人から否定的な言葉や態度を浴びせられていると、自己肯定感が低下し、自分をネガティブに捉えてしまうようになります。
認知の癖
人は誰でも、無意識のうちに「自分はダメだ」「周りの人はみんな自分を嫌っている」など、ネガティブな考えをしてしまうことがあります。こうした考えを「自動思考」といい、認知のゆがみの原因となります。自動思考は、幼少期の体験や経験から形成された「スキーマ」と呼ばれる固定観念によって引き起こされます。
ストレスや不安
ストレスや不安を感じると、人は現実を歪んで捉えてしまうことがあります。例えば、仕事でミスをしてしまったときに、過度に落ち込んで「自分はダメな人間だ」と自分を責めてしまうことがあります。また、恋人に振られたときに、自分を否定的に捉えてしまうことがあります。
参考URL:
【心理学】認知の歪みとは? なぜ起こるのか・原因と対策を解説|「マイナビウーマン」
認知のゆがみのデメリット
認知のゆがみがあると、以下のようなデメリットが生じます。
ストレスや不安の増加
認知のゆがみがあると、同じ出来事でもネガティブに捉えてしまうため、ストレスや不安を感じやすくなります。例えば、仕事でミスをしたとき、「自分はダメな人間だ」と過剰に考えてしまうと、落ち込んで自信を失ってしまいます。また、他人の言動を過度に気にしてしまうと、人間関係に不安を抱くようになります。
対人関係の悪化
認知のゆがみがあると、他人を誤解したり、攻撃的になったりすることがあります。例えば、「あの人は自分に嫌がらせをしている」と決めつけてしまうと、その人に対して攻撃的な態度を取ってしまい、対人関係が悪化する可能性があります。また、「自分は相手に受け入れてもらえない」と思い込んでしまうと、自信を失い、他人と積極的に関わることができなくなります。
行動力の低下
認知のゆがみがあると、挑戦する意欲や行動力が低下します。例えば、「自分は成功できない」と自信を失ってしまうと、新しいことにチャレンジすることができなくなります。また、「失敗したらどうしよう」と不安に思うあまり、何も行動できなくなってしまうこともあります。
精神疾患のリスク
認知のゆがみは、うつ病や不安障害などの精神疾患のリスクを高めると考えられています。認知のゆがみが強くなると、ネガティブな思考や感情が強くなってしまうため、精神的に不安定になりやすくなります。
参考URL:
認知の歪みを理解すれば人生が変わる!心理学者が説く対処法 | (株)心理オフィスK
認知のゆがみの対処法
認知のゆがみの対処法としては、以下のようなものが挙げられます。
認知のゆがみを知る
認知のゆがみには、さまざまな種類があります。まずは、自分がどのような認知のゆがみに陥りやすいかを把握しましょう。認知のゆがみを学ぶことで、自分の考え方のクセに気づくことができます。
客観的に物事を捉える
認知のゆがみは、自分の考えや感情を客観的に捉えられないことが原因で起こります。自分の考えに疑問を持ち、客観的に物事を捉えてみましょう。
肯定的な考え方を身につける
認知のゆがみは、ネガティブな考え方がベースになっていることが多いです。肯定的な考え方を身につけることで、認知のゆがみを改善することができます。
カウンセリングを受ける
認知のゆがみがひどい場合や、自分で対処するのが難しい場合は、カウンセリングを受けることを検討しましょう。カウンセラーの指導を受けることで、認知のゆがみを改善するための具体的な方法を学ぶことができます。
参考URL:
認知のゆがみとは?10パターンの具体例や原因、治し方、チェック【公認心理師監修】 丨コグラボ- Cognitive Behavioral Therapy Lab
認知のゆがみの同義語、類義語、関連語、反対語
- バイアス
- 推論の誤り