情動二要因理論は、アメリカの社会心理学者スタンリー・シャクターとジェローム・E・シンガーによって1962年に提唱された、情動の発生メカニズム**を説明する理論

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情動二要因理論とは

情動二要因理論は、アメリカの社会心理学者スタンリー・シャクターとジェローム・E・シンガーによって1962年に提唱された、情動の発生メカニズムを説明する理論です。

この理論は、情動は、生理的覚醒と状況の認知という二つの要因の相互作用によって生じると主張しています。

1. 生理的覚醒

生理的覚醒とは、心拍数の増加、発汗、呼吸の速まりなどの身体的な変化を指します。これは、恐怖、興奮、喜びなど、様々な状況で起こりえます。

2. 状況の認知

状況の認知とは、自分が置かれている状況をどのように理解し、解釈するかということです。

例えば、暗い路地を一人で歩いている時に、突然後ろから足音が聞こえた場合、心拍数が上がり、発汗が起こります。この生理的覚醒を、恐怖として認知するか、ジョギングをしている人の足音だと認知するかは、状況の認知によって決まります。

3. 情動の発生

シャクターとシンガーは、情動は、生理的覚醒と状況の認知が相互作用することによって生じると考えました。

つまり、ある状況で生理的覚醒が起こった場合、その状況をどのように認知するかによって、恐怖興奮喜びなどの様々な情動が生まれるということです。

として、以下のような状況を考えてみましょう。

  • 暗い路地を一人で歩いている時に、突然後ろから足音が聞こえた。
  • 好きな人に告白して、OKをもらった。
  • 大事なテストの前日に、十分な勉強ができなかった。

これらの状況では、それぞれ異なる生理的覚醒が起こります。

  • 暗い路地では、恐怖を感じ、心拍数が上がり、発汗が起こる。
  • 好きな人に告白した場合は、興奮を感じ、心拍数が上がり、顔が赤くなる。
  • テスト前日には、不安を感じ、心拍数が上がり、胃が痛くなる。

しかし、これらの状況をどのように認知するかによって、情動は変化します。

  • 暗い路地では、状況を危険だと認知すれば、恐怖を感じる。しかし、友達が追いかけてきただと認知すれば、安心を感じる。
  • 好きな人に告白した場合は、OKをもらえただと認知すれば、喜びを感じる。しかし、断られただと認知すれば、悲しみを感じる。
  • テスト前日には、十分な勉強ができただと認知すれば、自信を感じる。しかし、勉強ができていないだと認知すれば、不安を感じる。

このように、情動二要因理論は、情動は単純に生理的覚醒によって生じるのではなく、状況の認知によっても大きく影響を受けることを説明しています。

批判

情動二要因理論は、多くの研究によって支持されてきましたが、いくつかの批判も存在します。

  • 生理的覚醒と状況の認知の相互作用について、どのように起こるのかが十分に説明されていない。
  • すべての情動が、この理論で説明できるわけではない
  • 状況の認知が、必ずしも主観的なものであるとは限らない

これらの批判にもかかわらず、情動二要因理論は、情動の研究において重要な理論の一つであり、現在も多くの研究者によって研究されています。

補足

  • 情動二要因理論は、ジェームズ・ランゲ説キャノン・バード説を統合した理論であると言われています。**
  • 情動二要因理論は、マーケティング広告などの分野にも応用されています。