正常性バイアスとは、予期せぬ事態や変化が起こった際に、それを「正常の範囲内」と捉え、心の平静を保とうとする心理メカニズム

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正常性バイアスとは、予期せぬ事態や変化が起こった際に、それを「正常の範囲内」と捉え、心の平静を保とうとする心理メカニズムです。

正常性バイアスの具体例

正常性バイアスの具体的な例としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 火災警報器が鳴っているのに、誤報だろうと放置する。
  • 地震が発生しているのに、まだ揺れが続いているだろうと、そのまま待機する。
  • 会社の業績が悪化しているのに、すぐには改善するだろうと楽観視する。
  • 自分の健康状態に異変を感じても、たいしたことないだろうと放置する。

正常性バイアスは、人間が危険から身を守るために備わった心理機能であるとも考えられます。しかし、災害時や経営危機時など、危険を回避するためには冷静な判断が求められる場面では、逆に被害を拡大させる要因となることもあります。

以下に、正常性バイアスが災害に与えた影響の事例をご紹介します。

  • 1989年、アメリカで発生したロサンゼルス大地震では、多くの人が「地震は終わった」と誤解して建物内に留まったため、被害が拡大した。
  • 2003年、韓国で発生した大邱地下鉄放火事件では、乗客の多くが煙が充満しているのにもかかわらず、座ったまま待機していたため、多くの犠牲者が出た。

参考URL:
kobe-disaster-prevention-leader-text-chapter5.pdf

正常性バイアスの原因

正常性バイアスの原因は、以下の3つが挙げられます。

認知バイアス

認知バイアスとは、人間の認知過程において生じる偏りのことで、正常性バイアスも認知バイアスの一種です。人間は、自分の考えや信念を維持しようとする傾向があり、そのために現実を歪めて認識してしまうことがあります。正常性バイアスも、このような認知バイアスによって生じていると考えられており、自分の経験や知識に基づいて、現状を過小評価したり、異常な事態を正常なものと認識したりしてしまうのです。

ストレス回避

正常性バイアスは、想定外の事態によるストレスを回避するための機能として働くこともあります。災害や事故などの緊急事態に直面すると、人は大きなストレスを感じます。しかし、正常性バイアスによって「自分は大丈夫」「周りも大丈夫」と判断することで、ストレスを抑え、正常な日常生活を送ろうとするのです。

情報不足

正常性バイアスは、情報不足によっても生じる可能性があります。情報が不足していると、現状を正しく把握することができず、異常な事態を正常なものと認識してしまうのです。例えば、地震が起こっている現場に居合わせていると、周りの人々がパニックに陥っているのを見て、自分もパニックに陥ってしまうことがあります。しかし、テレビやインターネットで地震の被害状況を知れば、現状を正しく把握することができ、正常性バイアスに陥らずに済む可能性もあります。

参考URL:
正常性バイアスとは? 具体例、強い人の特徴、同調性バイアス - カオナビ人事用語集

正常性バイアスのメリットとデメリット

正常性バイアスには、以下のメリットがあります。

不安や恐怖を軽減する

正常性バイアスは、予期せぬ事態が起こった際に、それが「普通のこと」であると認識することで、不安や恐怖を軽減する効果があります。例えば、地震や洪水などの災害が発生した際には、正常性バイアスが働き、周囲が慌てている様子を見て「自分だけ慌てているわけではない」と安心感を得ることができます。

ストレスから心を守る

正常性バイアスは、現状維持を図ることで、ストレスから心を守る効果もあります。例えば、職場でパワハラやセクハラなどのハラスメントが発生した際には、正常性バイアスが働き、「自分だけが被害者ではない」と認識することで、ストレスを軽減することができます。

現状維持を図る

正常性バイアスは、現状維持を図ることで、安定した生活を送るのに役立ちます。例えば、仕事や人間関係で困難に直面した際には、正常性バイアスが働き、「どうにかなる」と楽観的に考えることで、現状を維持することができます。

デメリット

正常性バイアスには、以下のデメリットもあります。

リスクを過小評価する

正常性バイアスは、リスクを過小評価する原因となります。例えば、金融市場でバブルが発生した際には、正常性バイアスが働き、「このまま上がっていくだろう」と過度な楽観視を招き、大きな損失を出す可能性があります。

適切な判断ができなくなる

正常性バイアスは、適切な判断を妨げる原因となります。例えば、仕事でミスをしてしまった際には、正常性バイアスが働き、「たいしたことではない」と過小評価することで、適切な改善策を講じることができなくなる可能性があります。

被害を拡大させる

正常性バイアスは、被害を拡大させる原因となります。例えば、災害が発生した際には、正常性バイアスが働き、「大丈夫だろう」と避難を遅らせることで、被害を拡大する可能性があります。

参考URL:
正常性バイアスとは?事例やメリット、仕事におけるトラブル、防止策を紹介 – あしたの人事オンライン

正常性バイアスの対処法

正常性バイアスの対処法としては、以下のようなものが挙げられます。

正常性バイアスの存在を知っておく

正常性バイアスの存在を理解することで、自分自身が陥りやすいことを認識できます。

出来事に対して疑問を持つようにする

現状がいつも通りだからといって、そのままで良いのかを疑問視する癖をつけましょう。

多様な視点から物事を考える

自分の視点だけでなく、他の人の視点から物事を考えることで、新たな発見や気づきを得ることができます。

情報収集を怠らない

幅広い情報に触れることで、現状を客観的に捉えることができるようになります。

行動指針を作っておく

想定外の状況が発生した際に、どのように対応するかを事前に決めておくことで、正常性バイアスに陥っても冷静に対応することができます。

また、企業や組織として正常性バイアスに対処するためには、以下のようなものが挙げられます。

バイアスに関する研修を実施する

社員に正常性バイアスの存在と対処法を理解してもらうための研修を実施しましょう。

想定外の事態にどう対処するのかマニュアル化する

想定外の事態が発生した場合に、どのように対応するかをマニュアル化しておきましょう。

客観的で公平な評価ができる制度を構築する

個人のバイアスの影響を排除するために、客観的で公平な評価ができる制度を構築しましょう。

正常性バイアスは誰にでも起こり得るバイアスです。しかし、その存在を理解し、適切な対処をすることで、正常性バイアスによるリスクを軽減することができます。

参考URL:
正常性バイアスとは?仕事での問題点や対処法 | HRコラム

正常性バイアスの同義語、類義語、関連語、反対語

  • 恒常性バイアス
  • 正常化の偏見
  • 正常化の偏見
  • 正常への偏向
  • 日常性バイアス
  • 茹でガエル
  • ポリアンナ症候群
  • 同化性バイアス
  • 同調性バイアス
  • 集団心理