自己開示とは、自分自身に関する情報を、相手に伝えることを指します。
自己開示の提唱者は、アメリカの心理学者で精神医学者のシドニー・M・ジュラード(Sydney M. Jourard)氏です。ジュラード氏は、1971年に発表した著書「The Transparent Self」において、自己開示を「他者に自分の考えや感情をありのままに伝えること」と定義しました。
自己開示の具体例
自己開示の具体例としては、以下のようなようなものが挙げられます。
- 初対面の人との会話で、自分の趣味や好きなことを話す
- 仕事や学業で、自分の目標や抱負を語る
- 恋愛や結婚について、自分の考えや理想を話す
- 過去の失敗や経験を、相手に打ち明ける
- 自分の考えや意見を、相手に伝える
自己開示のレベル
自己開示のレベルとは、自分の内面や考えを、他人にどれだけ伝えているかという度合いを指します。自己開示のレベルは、以下の4つの段階に分類できます。
レベル1:趣味・嗜好
自分の趣味や嗜好、好きな食べ物や音楽など、誰にでも話せるような内容を話すレベルです。自己開示の最も浅い段階であり、相手からの評価に大きな影響を与えることはありません。
レベル2:価値観・信念
自分の価値観や信念、人生観や死生観など、自分にとって大切にしていることを話すレベルです。相手との共通点や違いを知るきっかけとなり、信頼関係を築く上で重要な役割を果たします。
レベル3:困難な経験
過去の失敗や挫折、トラウマなど、自分の弱い部分を話すレベルです。相手に理解や共感を求めるだけでなく、自分の成長や変化を促す効果もあります。
レベル4:自己否定的な欠点
自分の性格や能力の否定的側面、他人から嫌われるようなことを話すレベルです。相手と深い信頼関係を築いた上で行うことが望ましく、相手から受け入れられるかどうかは相手の性格や価値観によって大きく左右されます。
自己開示のレベルは、相手との関係性や状況によって適切に調整する必要があります。初対面の相手には、レベル1やレベル2程度の浅い自己開示から始めるのが一般的です。相手との信頼関係が深まってきたら、レベル3やレベル4の深い自己開示もできるようになるでしょう。
自己開示のコツ
自己開示のコツは、以下のとおりです。
小さな話題から自己開示する
いきなりプライベートな話をするのは、相手も気まずく感じてしまいます。まずは、仕事や趣味などの、比較的軽い話題から自己開示を始めましょう。
関係性と「お返し」の負担を考慮する
初対面の相手には、あまり深い話をするのは避けましょう。また、相手が自己開示してくれたら、自分も何か話すようにしましょう。
自分側の話をいれながら相手に質問する
自己開示を一方的に行うのではなく、自分側の話も入れながら、相手に質問しましょう。そうすることで、会話が弾みやすくなり、相手も自分のことを話しやすくなります。
適度な欠点や弱みを話す
完璧な人には誰も興味がありません。適度に自分の欠点や弱みを話すことで、相手も親近感を抱きやすくなります。
自己開示ができない原因
自己開示ができない原因は、大きく分けて以下の3つに分けられます。
自己肯定感が低い
自己肯定感が低い人は、自分の行動や発言に自信が持てず、「相手にどのように思われるか」「余計なことだと思われていないか」などを気にしてしまうため、自己開示自体のハードルがとても高く、恐怖心を抱いてしまっている可能性があります。
対人不安が高い
対人不安が高い人は、人と接することに不安や恐怖を感じるため、自分をさらけ出すことに抵抗を感じてしまいます。
過去のトラウマや経験
過去に辛い経験やトラウマを抱えている人は、それを知られることで相手に嫌われるのではないかと恐れ、自己開示を避けてしまうことがあります。
自己開示のメリットとデメリット
自己開示には、以下のメリットがあります。
信頼関係を構築できる
自己開示をすることで、相手は自分のことをより深く理解できるようになり、信頼関係が構築しやすくなります。
共感や理解を得られる
自己開示をすることで、相手と同じ経験や感情を持つ人がいることを知り、共感や理解を得ることができます。
自己理解を深められる
自己開示をすることで、自分の考えや感情を客観的に見つめ直し、自己理解を深めることができます。
新しい価値観や視点を得られる
自己開示をすることで、相手の考えや価値観を知ることができ、自分の考えや価値観を広げることができます。
自分を表現できる
自己開示をすることで、自分の考えや感情を自由に表現することができ、自己表現の幅を広げることができます。
具体的なデメリット
自己開示には、以下のデメリットもあります。
誤解や偏見を招く可能性がある
自己開示の内容によっては、相手に誤解や偏見を招く可能性があります。
傷つけられる可能性がある
自己開示の内容によっては、相手から傷つけられる可能性があります。
利用される可能性がある
自己開示の内容によっては、相手に利用される可能性があります。
プライバシーが侵害される可能性がある
自己開示の内容によっては、プライバシーが侵害される可能性があります。
自己開示と自己呈示の違い
自己開示と自己呈示は、どちらも自分のことを他者に伝える行為ですが、その目的が異なります。
自己開示とは、自分の内面や考え、感情などを他者に伝えることです。ありのままの自分をさらけ出すことで、相手との信頼関係を築いたり、理解し合ったりすることができます。
自己呈示とは、自分をより良く見せるために、他者に伝える内容や方法を工夫することです。印象操作や自己アピールとも呼ばれます。
自己開示と自己呈示の違いを、以下の表にまとめます。
項目 | 自己開示 | 自己呈示 |
---|---|---|
目的 | ありのままの自分をさらけ出して、相手との信頼関係を築いたり、理解し合ったりすること | 自分をより良く見せ、他者から好印象を与えること |
内容 | 自分の内面や考え、感情など、ありのままの自分 | 自分の良いところや強み、理想の自分など |
方法 | 正直に、素直に伝える | 印象操作や自己アピールを行う |
自己開示の同義語、類義語、関連語、反対語
- 自己開示の返報性
- 自己開示抵抗感